「十牛図」とは、宋の時代の禅の入門書と言えるもので、悟りに至る10の段階を10枚の絵と詩で表したものです。
真の「自己」が牛の姿で表されているため「十牛図」と言い、真の自己を求める自己は牧人で表されており、「十牛禅図(じゅうぎゅうぜんず)」「牧牛図」とも言われます。
作者は、中国北宋時代の臨済宗の禅僧・廓庵師遠(かくあんしおん)で、「十牛図」の絵は様々にありますが、著名なものに、室町時代前期の禅僧・絶海中津が描いた「十牛図」、室町時代中期の画僧が描いたと伝えられている「十牛図」(ともに、相国寺 蔵)があります。
廓庵の弟子の慈遠によって、次の序が付けられています。
「どんな人にも仏の真源、仏性が備わっているが、迷いの世界に入り込み、もがき苦しんでいるので、そこから逃れる方途をこれまでも示されては来たが、それらは不十分であったので、新たに廓庵禅師は牧牛によって、その方途を示された」
第一図から第十図
「牛」は本当の自分の象徴で、牛を探し求める牧人は「真の自己を探求する自分」をたとえたものです。
1、尋牛(じんぎゅう)=牛を探す
2、見跡(けんせき)=牛の足跡(手がかり)を見つける。
3、見牛(けんぎゅう)=牛の後ろ姿を発見します(あるべき自分の姿を発見)。
4、得牛(とくぎゅう)=牛を捕らえますが、逃げ出そうとする牛と格闘が始まります。
5、牧牛(ぼくぎゅう)=暴れる牛を手なずけます。
6、騎牛帰家(きぎゅうきか)=牛に乗って家路につきます(真の自己と自分自身が一体となる)
7、忘牛存人(ぼうぎゅうぞんじん)=家に帰れば、牛を小屋に入れた事で牛を忘れ、あるがままに生きる
8、人牛倶忘(じんぎゅうぐぼう)=全て忘れ、有るのは空白だけで、真の自分さえも消え去る
9、返本還源(へんぽんかんげん)=何もない清浄無垢の世界に戻り、人間の本源に還る
10、入てん垂手(にってんすいしゅ)=悟りを開いたとしても、何もしなくては無意味で、迷える人を救い、人々の世に生き、悟りへと導く
「真の自己」が牛の姿で表されるのは、インドの聖牛からという考え方と、農耕民族としての中国人には、牛が実際生活の支えであった為と考えられるようです。
「十牛図」は、もがき苦しむ迷いの世界から逃れる道を、牧牛のたとえによって私達に示されており、是非どこかで、ご覧頂く機会がある事を願います
今日の誕生花は、「万年青(おもと)」